10月は、人件費と職場のルールに関わる変更が一度に動き出す月です。最低賃金の改定、カスハラ対策の義務化、パートの社会保険の要件見直しが重なります。
この月報では、9月までに発表された経営・労務・税・補助金の動きから、小さな会社が押さえておきたい7つを選びました。それぞれ、公式の発表へのリンクを付けています。
今月の3行まとめ
10月に押さえたい3つ
- 最低賃金は全国加重平均1,177円(56円増)。10月1日から12月2日にかけて、都道府県ごとに順次上がる
- 10月1日から、カスハラ対策と求職者へのセクハラ対策が、規模を問わずすべての事業主の義務に
- パートの社会保険は「月8.8万円以上」の要件が10月に撤廃予定。インボイスの経過措置も10月から控除割合が下がる
先月の主な動き
1. 最低賃金、全国加重平均は1,177円に
全国の最低賃金の改定額が、すべての都道府県で答申(審議会が国に出す意見)されました。全国加重平均は1,177円で、昨年度の1,121円から56円の引き上げです。
最高額は1,280円、最低額は1,085円。発効日は都道府県によって違い、10月1日から12月2日までの間に順次上がります。
時給で働く人だけでなく、月給の人も時間あたりに直すと下回っていないかの確認が必要です。自社のある都道府県の金額と発効日を、早めに確かめておきましょう。
ポイント:まずは時給で働く人の一覧から。新しい金額を下回る人がいないか見てみてください。求人票の時給も、あわせて確認を。
出典:厚生労働省「全ての都道府県で地域別最低賃金の改定額が答申されました」
2. カスハラ対策・求職者へのセクハラ対策が10月1日から義務に
2026年10月1日から、カスハラへの対策が事業主の義務になります。カスハラ(カスタマーハラスメント)は、顧客や取引先からの著しい迷惑行為のこと。
あわせて、就職活動中の学生など、求職者へのセクハラを防ぐ措置も義務に。対象は、業種や規模を問わずすべての事業主。従業員が数名の会社も含まれます。
事業主に求められる主な措置は次のとおりです。
- 会社としての方針をはっきりさせ、管理職を含む従業員に伝える
- 相談を受けて対応するための窓口・体制を整える
- 起きたときに事実を確かめ、被害を受けた人への配慮と再発防止を行う
- 相談した人のプライバシーを守り、不利益な扱いをしないことを伝える
ポイント:相談先を決めて社内に伝えるところから。窓口は、社長か担当者を1人決めるだけでも始められます。
会社としての方針も、短い文にまとめて共有しておくと安心です。
3. パートの社会保険、「月8.8万円」の要件が10月に撤廃予定
パートなど短時間で働く人が、厚生年金・健康保険に入る条件が変わります。「所定内賃金が月額8.8万円以上」という要件が、2026年10月に撤廃される予定です。
いわゆる「106万円の壁」と呼ばれてきた基準がこれ。一方で「週20時間以上」「学生でない」という要件は、そのまま残る見込みです。
企業規模の要件は、2027年9月までは従業員51人以上の会社が対象。その後は36人以上(2027年10月)、21人以上(2029年10月)、11人以上(2032年10月)と広がります。
今は対象外の会社も、何年後に当てはまるかを見ておくと、人員計画を立てやすくなるはずです。
ポイント:週20時間以上働くパートの人数を数えておく。本人にも変更を伝え、働き方の希望を聞いておくと慌てずに済みます。
出典:日本年金機構「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大」
4. インボイス:2割特例の終了と、仕入れの控除割合の引き下げ
インボイス制度の「2割特例」が、2026年9月30日を含む課税期間までで終わりました。2割特例は、納める消費税を売上の税額の2割にできる負担軽減の仕組みです。
個人事業者向けには、2027年分・2028年分に使える「3割特例」が新しくできています。
免税事業者など、インボイスのない相手からの仕入れにも変更あり。仕入れにかかった消費税を差し引ける割合が、10月1日から70%に下がりました。
その後は2028年10月から50%、2030年10月から30%、2031年10月以降は0%になる予定です。外注先に個人事業主が多い会社は、取引先の登録状況をあらためて確認しておきたいところ。
出典:国税庁「令和8年度税制改正によるインボイス制度の見直しについて」
5. 「人手不足」倒産、1〜8月で333件
東京商工リサーチの調査では、2026年8月の「人手不足」倒産は32件でした。前年同月より39.1%多く、8月としては最多です。
1〜8月の累計は333件(前年同期比38.7%増)。要因別では「人件費高騰」が175件と、前年同期の2倍を超えています。
8月の倒産のうち、資本金1,000万円未満の会社が22件と約7割を占めました。採用と同じくらい、今いる人が辞めない職場づくりが経営課題になっています。
出典:東京商工リサーチ「人手不足」倒産の調査(2026年9月3日公表)
6. 秋の補助金、事業承継と成長投資の公募が始まる
中小機構の補助金スケジュールでは、10月から11月にかけて次の公募が予定されています。
| 補助金 | 申請受付 | 締切 |
|---|---|---|
| 事業承継・M&A補助金(第16次) | 2026年10月2日〜 | 2026年11月6日 |
| 中小企業成長加速化補助金(第3回) | 2026年9月29日〜 | 2026年10月29日 |
7. LINE VOOMが9月30日で終了、公式アカウントの発信も見直しを
LINEヤフーは、動画などを投稿できる「LINE VOOM」の提供を2026年9月30日で終えました。
LINE公式アカウントでも、「LINE VOOMに投稿」する機能などが9月16日に廃止されています。代わりに、画像・動画・テキストを組み合わせた新しい「投稿」機能が予定されています。
VOOMを会社や店舗の発信に使っていた場合は、今後の出し先を決めておくと安心。
出典:LINEヤフー for Business「LINE VOOMの提供終了に伴うLINE公式アカウントの機能変更について」
今月の期限・予定
公式の発表で確かめた、10月前後の主な日付をまとめました。
| 日付 | 内容 |
|---|---|
| 9月30日 | LINE VOOMの提供終了 |
| 9月30日 | インボイス「2割特例」の対象となる課税期間の区切り(この日を含む課税期間まで) |
| 10月1日 | カスハラ対策・求職者へのセクハラ対策が義務に |
| 10月1日 | 免税事業者等からの仕入れの控除割合が80%から70%に |
| 10月1日〜12月2日 | 最低賃金が都道府県ごとに順次発効 |
| 10月(予定) | パートの社会保険の「月8.8万円以上」要件を撤廃 |
| 10月2日〜11月6日 | 事業承継・M&A補助金(第16次)の申請受付 |
| 10月29日 | 中小企業成長加速化補助金(第3回)の締切 |
最低賃金の発効日は、都道府県で最大2か月ほどずれる点に注意。給与計算の締め日との関係も、あわせて確かめておいてください。
Rootsの新着
9月は、Rootsで2社の社長インタビューを公開しました。どちらも、1社を3本に分けてお届けしています。
株式会社エグゼマッチ・猪谷進介さん
人脈ゼロからの独立、業務委託メンバーとの信頼づくり、経営者コミュニティの運営までを伺いました。
株式会社With
働く人の事情に合わせたチームづくりと、事業の原点を伺いました。
編集後記
10月は、人件費も職場のルールも一度に変わる月になりました。どれも「知らなかった」では済まない話ですが、全部を一度に片づける必要はありません。
まずは自社に関係する項目に印を付け、担当と期限を決めるところから。ひとつ決まれば、残りも動き出します。
個別の判断に迷うときは、社労士・税理士などの専門家に相談してください。
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