最低賃金の改定で小さな会社が見直すこと

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最低賃金が上がると、まず気になるのは人件費です。ただ、賃金表を直すだけで終わらせると、あとで思わぬ抜け漏れが出てきます。

結論として、見直したいのは「自社の発効日」「時間あたりの賃金」「月給の人」「求人票」「助成金の締切」の5つ。どれも紙とペンで確かめられるもの。

2026年度の最低賃金は、全国加重平均で1,177円になりました。この記事では、改定の中身と、小さな会社が順番にやることを整理します。

賃上げを社内にどう伝えるかについて、Rootsで取材した社長の考え方もあわせて紹介。

この記事でわかること

  • 2026年度の最低賃金の金額と、都道府県ごとの発効日
  • 時給・月給それぞれの確認のしかたと、対象にならない手当
  • 今すぐ/今月中/次の期限までにやること
目次

何が変わったか:全国加重平均1,177円、10月1日から順次

2026年度(令和8年度)の地域別最低賃金は、全国加重平均で1,177円。改定前の1,121円から、56円の引き上げです。

最高額は東京都の1,280円、最低額は宮崎県の1,085円。関係するのは、パート・アルバイトを含めて人を雇っているすべての会社です。

地域別最低賃金とは、都道府県ごとに決まる時間あたりの下限額のこと。産業を問わず、その都道府県で働くすべての人に適用されます。

発効日は都道府県ごとに違う

見落としやすいのが発効日。10月1日に上がる県もあれば、12月まで待つ県もあります。

都道府県2026年度の額発効日
東京1,280円2026年10月1日
大阪1,231円2026年10月1日
愛知1,195円2026年10月1日
北海道1,131円2026年10月1日
福岡1,114円2026年10月4日
秋田1,090円2026年10月14日
沖縄1,086円2026年12月2日
宮崎1,085円2026年10月24日

発効日の幅は、10月1日から12月2日まで。全47都道府県の額と日付は、厚生労働省の一覧で確認できます。

複数の県に事業所がある会社は、拠点ごとに日付が違う点に注意してください。給与計算の締め日の途中で発効日が来ると、同じ月のなかで単価が変わります。

出典:地域別最低賃金の全国一覧|厚生労働省

小さな会社への影響は、時給の人だけではない

影響が出るのは、時給で働く人だけではありません。月給の人、歩合の人、そして求人票にも波が及びます。

月給の人も、時間あたりに直して確認する

月給制であっても、時間あたりに直すと最低賃金を下回ることがあります。確認の式は「月給÷1か月平均所定労働時間」。

厚生労働省は、年間で見る計算例も示しています。「(月給×12か月)÷(年間所定労働日数×1日の所定労働時間)」で時間額を出し、自社の都道府県の額と比べる形。

支払い方確認のしかた
時間給時間給 ≧ 最低賃金額(時間額)
日給日給 ÷ 1日の所定労働時間 ≧ 最低賃金額(時間額)
月給月給 ÷ 1か月平均所定労働時間 ≧ 最低賃金額(時間額)
出来高払い・請負制賃金総額 ÷ その期間に労働した総労働時間 ≧ 最低賃金額(時間額)
組み合わせそれぞれを時間額に換算して合計し、最低賃金額と比べる

基本給が日給で手当が月給、という形もよくあります。その場合は、それぞれを時間額に直してから合計してください。

最低賃金の対象にならない賃金がある

時間あたりの賃金を出すとき、すべての手当を足してよいわけではありません。

厚生労働省の計算例では、通勤手当、時間外手当(時間外割増賃金)、深夜割増賃金、精皆勤手当、家族手当が、計算から除かれています。

つまり、通勤手当を多く払っていても、最低賃金の判断には使えないということ。

手当の名前ではなく中身で判断されるため、自社の手当の扱いに迷うときは確認が必要です。休日割増、臨時に支払われる賃金、1か月を超える期間ごとに支払われる賃金の扱いも同じ。

判断に迷う場合は、都道府県労働局の賃金課(室)か労働基準監督署に問い合わせてください。

出典:最低賃金額以上かどうかを確認する方法|厚生労働省

求人票の時給も、同時に直す

社内の賃金だけ直して、求人票を忘れる会社が少なくありません。古い時給が載ったままだと、応募者に不信感を与えます。

ハローワーク、求人サイト、自社の採用ページ。出している場所をすべて数え、同じ日に直してしまうのが早いやり方です。

「下回っていた」ときは、さかのぼって支払う

最低賃金を下回る契約は、その部分が無効になります。下回っていた分は、さかのぼって支払う必要があると考えておいてください。

気づいた時点で止めるのが一番の対策。発効日を過ぎてから慌てないよう、先に一覧をつくっておきましょう。

やることリスト:今すぐ/今月中/次の期限まで

ここからは順番の話です。全部を一度にやる必要はありません。

ポイント:最初にやるのは「人の一覧」と「自社の発効日」の2つだけ。

今すぐ(今週のうちに)

  • 自社の都道府県の改定額と発効日を調べ、カレンダーに書き込む
  • 時給で働く人の一覧をつくり、新しい額を下回る人に印を付ける
  • 複数の拠点がある場合は、拠点ごとに額と発効日を書き分ける

今月中

  • 月給・日給・歩合の人も、時間あたりに直して確認する
  • 発効日と給与計算の締め日の関係を確かめ、単価が変わる日を決める
  • 雇用契約書・労働条件通知書の時給の記載を直す
  • 求人票の時給を、出しているすべての場所で直す

次の期限まで

  • 人件費が年間でどのくらい増えるかを試算する(時間数×差額×人数)
  • 社会保険料への影響を、顧問の社労士・税理士と確認する
  • 価格の見直しが必要かを検討し、取引先への説明の時期を決める
  • 来年の改定も見込んで、賃金表の考え方を決めておく

試算は、ざっくりで構いません。「時間あたり56円上がると、月に何時間働いてもらっているから、年でいくら」と出すだけで、判断の土台になります。

設備投資を考えるなら「業務改善助成金」

賃上げとあわせて設備投資をするなら、厚生労働省の業務改善助成金という選択肢があります。

生産性向上に役立つ設備投資などを行い、事業場内最低賃金を一定額以上引き上げた場合に、費用の一部が助成される仕組み。

事業場内最低賃金とは、その事業場で最も低い時間給のこと。対象は、雇用保険の被保険者で、雇入れから6か月を経過した人の賃金を引き上げる場合です。

申請の期限に注意

令和8年度の申請期間は、令和8年9月1日から「申請する事業場がある都道府県の地域別最低賃金の発効日の前日」または「令和8年11月30日」のいずれか早い日まで。

10月1日に発効した都道府県では、すでに締切を過ぎています。発効日が遅い都道府県では、まだ間に合う場合があります。

注意したいのは、賃金の引き上げと設備投資は交付決定後に実施するものが対象という点。先に買ってしまうと対象外です。

公募期間や条件は変わることがあるため、申請を考えるときは必ず公式サイトで最新の情報を確認してください。制度の内容は、業務改善助成金コールセンター(0120-366-440)でも相談できます。

出典:業務改善助成金|厚生労働省

事業完了の期限もあります。令和8年度の申請分は、納品・支払い・賃金引き上げを交付決定の属する年度の1月31日までに終える必要があります。やむを得ない理由があれば、延長される場合も。

実例:賃上げも働き方も、社内の話し合いから始まる

人件費の話は、数字を直すだけでは終わりません。社員やメンバーにどう伝えるかで、受け取られ方が変わります。

「なぜ今は待ってほしいのか」まで話す

Rootsを運営する株式会社With 代表の秋枝紗由里さんは、意見が違うときに理由を示して話し合うことを大切にしています。

小さい会社だからこそ、一枚岩になっていないと前へ進めません。なぜ嫌なのか、なぜ今は待ってほしいのかを、きちんと話し合えることが大事だと思っています

秋枝紗由里さん(株式会社With)

賃上げも、待ってもらう判断も、理由を言葉にできるかどうかが分かれ目。「法律で上がったから」だけでは、受け止め方に差が出ます。

いくら上がるのか、どこを見直して原資をつくるのか。この2つを短く伝えるだけでも、納得感は変わってくるはずです。

働き方を一つに決めつけない

人件費が上がる局面で効いてくるのが、今いる人が辞めない職場づくり。株式会社エグゼマッチ 代表の猪谷進介さんは、働き方についてこう話しています。

画一的な働き方を求めるのではなく、それぞれが力を発揮できる方法を一緒に探したいと考えています。

猪谷進介さん(株式会社エグゼマッチ)

猪谷さんは、短い会話を頻繁に重ねることで信頼を築いてきました。その積み重ねが、3〜4年続けて働くメンバーにつながったそうです。

採用し直すコストを考えれば、定着は人件費対策の一つ。賃上げと同じ机の上で考えたいテーマといえます。

まとめ

最低賃金の改定は、毎年やってくる予定された変化です。放っておくと、支払い漏れという形で跳ね返ってきます。

まずは今週、自社の都道府県の発効日をカレンダーに書き込み、時給で働く人の一覧をつくってみてください。 この一覧と手順は、来年の改定でもそのまま使えます。

できるところから、一歩ずつ進めていきましょう。

なお、手当の扱いや契約の見直しなど、個別の判断に迷うときは社会保険労務士や税理士、最寄りの労働基準監督署に相談してください。

出典・参考

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この記事を書いた人

Roots編集部(株式会社With)

中小企業の経営者インタビューを続ける編集部。取材で聞いた経営者の実践を、ほかの会社でも使える形にまとめています。

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