会議のあとに議事録が残らない。残っても、書いた人しか読み返さない。
小さな会社ほど、ここでつまずきがちです。やる気の問題ではありません。
結論から書きます。文字起こしはAIに任せ、人が整えるのは「決まったこと・担当・期限」の3点だけで十分。
残りは文字起こしの原文に置いておけば足ります。きれいな文章に直す必要はありません。
この記事では、会議記録を仕組みにする4ステップと、AIに任せてはいけない部分の線引きを整理しました。
Rootsに登場した社長お二人の実例も添えています。読み終えたら、今週の会議からそのまま試せるはず。
この記事でわかること
- 会議を3種類に分けて、残す量を決める方法
- AIに任せるのは決定・担当・期限の3点だけという線引き
- 株主総会・取締役会の議事録でAIに任せられない部分
議事録が続かない、3つの理由
多くの会社が、同じ3か所で止まります。順に見ていきましょう。
- 理由1:書く人の負担が大きい:会議中に話を聞きながら要点をまとめる作業は、慣れた人でも神経を使う。結果として議事録は「手が空いている人の雑務」に
- 理由2:何を残すか決まっていない:雑談も決定事項も同じ重さで書き込むと、長いだけの記録ができあがる。読み返す人はいない
- 理由3:置き場所が人によって違う:チャットに貼る人、メールで送る人、自分のメモ帳で終わる人。探す時間のほうが長くなり、やがて誰も探さなくなる
置き場所がばらけるのが、一番もったいないところ。探す時間のほうが長くなります。
AIを入れると、理由1はほぼ消えます。残る理由2と理由3は、人が決めるしかない部分。
掲載社長の実例:記録より先に「接点の回数」を決めた
会議記録の話は、つい道具選びから始まります。でも先に決めるべきなのは、誰とどれくらい話すかという設計のほう。
株式会社エグゼマッチ 代表の猪谷進介さんは、業務委託メンバーとの関わり方を回数で設計しています。
私が重視しているのは、1回の会話の長さよりも回数です。最初の段階では短くても頻繁に話し、安心して本音を言えるようになったら、徐々に頻度を減らしていきます
猪谷進介さん(株式会社エグゼマッチ)
長い会議を月1回開くより、短い接点を何度も持つ。この形なら、1回の記録は数行で済みます。
猪谷さんは、関係ができてきたサインも言葉づかいから拾っているそうです。
文章の語尾が少し柔らかくなったり、以前より率直な相談が届いたりするんです
猪谷進介さん(株式会社エグゼマッチ)
こうした変化は、議事録の定型フォーマットには入りません。だからこそ、文字起こしの原文を残す意味があります。
もう一つ、記録の目的をはっきりさせてくれる言葉を紹介します。株式会社With 代表の秋枝紗由里さんの話です。
小さい会社だからこそ、一枚岩になっていないと前へ進めません。なぜ嫌なのか、なぜ今は待ってほしいのかを、きちんと話し合えることが大事
秋枝紗由里さん(株式会社With)
記録に残すべきは、結論だけではありません。
「なぜそう決めたか」が残っていれば、あとから入った人も同じ前提で動けます。説明をやり直す手間も減るでしょう。
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そのまま真似できる4ステップ
ここからは手順です。今週のうちにステップ2まで終われば上出来。
ステップ1:会議を3種類に分ける
全部の会議に同じ議事録はいりません。目的で分けると、残す量が自然に決まります。
| 種類 | 目的 | 残すもの |
|---|---|---|
| 決める会議 | 方針・投資・人の配置を決める | 決定/担当/期限。必要なら反対意見も一行 |
| 共有の会議 | 進捗と数字をそろえる | 数字と変化点だけ。文字起こしは保存のみ |
| 1対1 | 本人の状況を知る | 本人の了解を得た範囲のメモ。原文は残さない |
迷ったら「この会議で何かが決まるか」で切ると早いです。決まらない会議に、立派な議事録はいりません。
ステップ2:録音と文字起こしを自動で回す
オンライン会議なら、録音と文字起こしを自動で始める設定にしておきましょう。対面なら、スマートフォンの録音アプリで足ります。
ここで一つだけ、省けない作業があります。
ポイント:録音は、全員の了解を得てから。参加者全員に、録音することとその使い道を先に伝えてください。
文字起こしとは、音声を自動で文章に変換する機能のこと。精度は環境に左右されるため、専門用語や社名は後から直す前提で使ってください。
ステップ3:AIに作らせるのは3点だけ
文字起こしを渡したあと、AIに頼むのは要約ではなく抽出です。指示を固定しておけば、毎回の出来が安定します。
次のような指示文を、チャットのテンプレートに保存しておきましょう。
以下は社内会議の文字起こしです。(1)決まったこと (2)担当者 (3)期限 を箇条書きで抜き出してください。決まっていないことは「未決」として分けてください。推測で補わないでください。
ポイント:「推測で補わないでください」を必ず入れる。この一文がないと、言っていないことが要約に混ざります。
抽出された3点を、人が5分だけ見直す。これで議事録は完成です。
ステップ4:置き場所を1か所に決める
探す時間をゼロにするのが、最後の仕上げ。保存先は1か所、命名ルールも1つに決めます。
おすすめは「日付_会議名」の形。2026-10-16_定例のように並べれば、検索でも日付順でも見つかります。
決定事項だけを並べた一覧ページを別に作るのも効果的。探す手間がもう一段減ります。
AIに任せる前に決める、2つの線引き
便利さだけで進めると、あとで戻れなくなる部分があります。先に2つだけ確認しておきましょう。
1. 法律で作成が決まっている議事録がある
株式会社の株主総会と取締役会の議事録は、会社法で作成が義務づけられています。社内の定例会議とは扱いが別です。
会社法で決まっている備え置きと署名
株主総会の議事録は、株主総会の日から10年間、本店に備え置く必要があります(会社法第318条)。
取締役会を設置している会社では、取締役会の議事録も10年間の備え置きが求められます(会社法第371条)。
さらに、取締役会の議事録を書面で作った場合、出席した取締役と監査役は署名または記名押印をしなければなりません(会社法第369条第3項)。
つまり、下書きをAIに作らせるのは問題なし。確定と署名は人の仕事、と覚えておけば迷いません。
2. 生成AIに個人の話を入れるときの注意
会議の文字起こしには、特定の社員の評価や体調など、個人情報が混ざることがあります。
個人情報保護委員会の注意喚起(2023年6月2日)
プロンプト(AIへの指示文)に個人データを入れる前に、利用目的の範囲内かどうかを十分に確認すること。これが一つ目の求めです。
入力した個人データが応答結果の出力以外の目的で扱われないか、機械学習に使われないかを確認することも挙げられています。
実務としては、次の3つを決めておけば足ります。
- 使うサービスを社内で1つに絞り、学習に使わない設定にする
- 1対1の面談は、原文の文字起こしを残さない
- 名前を伏せる場所を決めておく(評価・体調・家庭の事情)
制度の解釈や個別の判断は、社会保険労務士・税理士・弁護士といった専門家に相談してください。この記事は一般的な解説にとどめています。
自社で確かめる7つの質問
今の会議記録が仕組みになっているか、7つの質問で確かめられます。
- 先週の「決める会議」で何が決まったか、参加していない人が5分で分かりますか
- 録音することを、参加者全員に事前に伝えていますか
- AIへの指示文は、毎回同じものを使っていますか
- 議事録の保存先は1か所に決まっていますか
- 株主総会・取締役会の議事録は、社内会議と分けて管理していますか
- 1対1の面談内容を、本人の了解なく共有していませんか
- 書く人が毎回同じ一人に偏っていませんか
半分以上に「はい」と言えないなら、ステップ1と2だけ先に整えてみてください。
まとめ
議事録は、気合いで続けるものではなく、仕組みで続くもの。AIが引き受けてくれるのは書き取りの部分だけで、何を残すかを決めるのは今も人の役目です。
まずは今週の「決める会議」を一つ選んで、録音と文字起こしを自動で始める設定にしてみてください。残すのは、決まったこと・担当・期限の3点だけ。
猪谷さんが回数を重ねて信頼を育てているように、記録も一度に完成させなくて大丈夫。
小さく始めた記録が積み上がれば、社長が同じ説明を繰り返す時間は少しずつ減っていきます。
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