業務委託のメンバーが定着するかどうかは、報酬や契約の条件だけでは決まりません。大きく効いてくるのは、仕事の依頼以外の「接点」をどれだけ持てているかです。
この記事でわかること
- 業務委託メンバーが定着しにくい3つの理由
- 3〜4年続くチームをつくった株式会社エグゼマッチの実例
- 定着する会社に共通する5つの条件と、明日から始める4ステップ
業務委託メンバーが定着しにくい理由
業務委託で人を迎える会社は増えています。一方で「せっかく慣れた頃に契約が終わってしまう」「連絡が事務的で、本音が見えない」という声もよく聞きます。
多くの会社が同じところで迷うのには、構造的な理由があります。
- 会う機会が少ない:オンラインのやり取りが中心で、業務連絡だけで一日が終わる
- 評価が成果だけになりやすい:納品物は見えても、働き方や困りごとは見えにくい
- 関係が「発注と受注」で止まる:相談しづらく、小さな不満が積み重なって離れていく
社員であれば雑談や面談で自然に拾えていたものが、業務委託では意識しないと抜け落ちます。定着のカギは、この「抜け落ちる部分」を意図してつくれるかどうかです。
実例:株式会社エグゼマッチが続けてきた「短くて多い雑談」
経営者コミュニティを運営する株式会社エグゼマッチの猪谷進介さんも、業務委託メンバーが定着しない課題に向き合ってきた一人。
Rootsのインタビューで、その解決策として続けてきた関係づくりを語っています。
猪谷さんが大切にしているのは、会話の長さより回数です。
私が重視しているのは、1回の会話の長さよりも回数です。最初の段階では短くても頻繁に話し、安心して本音を言えるようになったら、徐々に頻度を減らしていきます。
猪谷進介さん(株式会社エグゼマッチ)
続けるうちに、テキストのやり取りにも変化が出てきたといいます。
語尾のニュアンスが少しフランクになるだけでも、信頼してくれたんだなと思えてうれしいです。
猪谷進介さん(株式会社エグゼマッチ)
こうした取り組みの結果、メンバーの定着は改善しました。今では3〜4年にわたって一緒に働いているメンバーもいるそうです。
採用で見ているのは、完成されたスキルだけではありません。猪谷さんが挙げるのは「誠実さ」と「学ぶ意欲」。
スキルは経験で伸ばせる一方、相手に誠実に向き合う姿勢は信頼を土台にした仕事に欠かせない、という考え方です。
業務委託メンバーが定着する会社の5つの条件
エグゼマッチの実例と、業務委託の関係で起きやすいつまずきから、定着する会社に共通する条件を5つに整理しました。
- 仕事の話をしない「短い接点」がある
- 成果だけでなく「働き方」を知ろうとしている
- スキルより「誠実さ」と「学ぶ意欲」で選んでいる
- 取引条件がはっきりしている
- 変化に気づいて、言葉にして返している
条件1:仕事の話をしない「短い接点」がある
業務連絡だけの関係では、相手の状況や本音は見えてきません。15分ほどの雑談でも、回数を重ねることで「話しても大丈夫な相手」になっていきます。
ポイント:長さより頻度。最初は週1回などこまめに設け、関係ができてきたら間隔を空けていく。
1回15分なら、忙しい経営者でも続けられます。時間を決めてカレンダーに入れておくと、後回しになりにくくなります。
条件2:成果だけでなく「働き方」を知ろうとしている
業務委託は、働く時間や場所の自由度が高い働き方です。その分、どんな事情で、何を大切にして働いているのかは、聞かなければ分かりません。
子育てや別の仕事との両立など、事情は人それぞれ。画一的な働き方を求めるより、その人が力を出せるやり方を一緒に探すほうが、結果として長く続きます。
条件3:スキルより「誠実さ」と「学ぶ意欲」で選んでいる
定着は、採用の段階から始まっています。今のスキルが高くても、報告や相談が滞る関係は長続きしません。
「誠実さ」と「学ぶ意欲」を重視すれば、スキルは一緒に仕事をする中で伸ばせます。
ポイント:面談で「過去の仕事で困ったとき、どう動いたか」を聞く。姿勢が見えやすくなります。
条件4:取引条件がはっきりしている
関係づくりの前提になるのが、仕事の範囲・報酬・支払日などの条件を最初に明確にしておくことです。
条件があいまいなままだと、どれだけ雑談を重ねても不信感が残ります。口頭で決めたことも、メールやチャットなど後から見返せる形で残しておきましょう。
追加の依頼が増えてきたときも同じです。「これは今の契約の範囲か」をその都度すり合わせると、お互いに無理が生まれません。
2024年11月1日「フリーランス・事業者間取引適正化等法」が施行
個人で仕事を受けるフリーランスに業務を委託する事業者には、取引条件の明示などが義務づけられています。
報酬の支払期日(原則として給付を受け取ってから60日以内)や、中途解除の事前予告など、発注側の条件によって対象になる義務もあります。
自社が当てはまるかは公正取引委員会のページで確認してください。個別の判断に迷うときは、社労士や弁護士などの専門家への相談が確実です。
条件5:変化に気づいて、言葉にして返している
信頼は、特別な制度より日々の小さな変化から見えてきます。返信の語尾が柔らかくなった、以前より率直な相談が来るようになった。
そうした変化に気づいたら、「相談してくれて助かります」と言葉で返しましょう。気づいて返すことが、「この会社は見てくれている」という安心につながります。
明日から始める4ステップ
5つの条件を、すぐに試せる手順に落とし込みました。
| ステップ | やること | 目安 |
|---|---|---|
| 1 | 業務委託メンバーごとに、15分の雑談の時間をカレンダーに入れる | 最初の1〜2か月は週1回 |
| 2 | 雑談では仕事の進み具合ではなく、最近の状況や困りごとを聞く | 毎回1つだけ質問を用意 |
| 3 | 契約内容(範囲・報酬・支払日・連絡方法)を文書で確かめ直す | 今月中 |
| 4 | 関係ができてきたら、雑談の頻度を月2回程度に減らす | 3か月目以降 |
いきなり全員に広げる必要はありません。まずは一番長く一緒に働いてほしい人から始めてみてください。
自社で確かめるチェックリスト
- 業務委託メンバーと、仕事以外の話をしたのはいつが最後か
- メンバーそれぞれの働く事情(時間帯・両立していること)を知っているか
- 採用のとき、スキル以外に何を見ているか言葉にできているか
- 仕事の範囲・報酬・支払日を、文書で明示しているか
- 最近、メンバーの変化に気づいて言葉を返したか
2つ以上答えに詰まる項目があれば、そこが見直しのポイントです。
よくある質問
業務委託メンバーとの関係づくりで、経営者からよく出る疑問をまとめました。
Q. 雑談では何を話せばいいですか?
仕事の進み具合や評価の話は、あえて外します。「最近の忙しさはどうか」「作業しやすい時間帯はいつか」など、答えやすい問いを1つ用意すれば十分です。
話を広げようと頑張る必要はありません。聞いた話を覚えておき、次の回に「あの件どうなりました?」と聞くだけで、関係は深まっていきます。
Q. 業務委託の人に雑談を求めるのは負担になりませんか?
負担に感じる人もいます。参加は任意で、15分で必ず切り上げると最初に伝えておきましょう。
忙しい時期は飛ばしてよい、と決めておくのも一つの方法。「話したいときに話せる場がある」という安心感が、続けるうえで大切です。
Q. メンバーが増えて、全員と話す時間がとれません
社長が一人で全員を見る必要はありません。窓口役の社員を決めて、雑談の時間を分担する方法があります。
聞いた話を短くメモに残しておけば、担当が変わっても関係が途切れません。月1回、数人で集まる場を設けるのも効果的です。
まとめ
業務委託メンバーとの関係は、特別な制度がなくても変えていけます。必要なのは、仕事以外の短い接点を持ち続けることです。
まずは今週、一番長く一緒に働いてほしい人に「15分だけ話しませんか」と声をかけてみてください。
最初の1回はぎこちなくても大丈夫。回数を重ねるうちに、返ってくる言葉が少しずつ変わっていくはずです。
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