経営トピック月報 2026年11月号|インボイス70%控除と11月の補助金2本

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10月は、経理と労務に直接ひびく変更が重なりました。免税事業者からの仕入れの控除割合が下がり、パート・有期で働く人への明示事項も増えています。

11月は補助金の節目が2つ。締切のほうが先に来るので、順番を間違えないよう日付から確認してください。

目次

今月の3行まとめ

11月に押さえたい3つ

  • 10月1日から、免税事業者からの仕入れは「70%控除」に変わった
  • パート・有期雇用への労働条件明示に、説明を求められる旨の1項目が追加
  • 11月は事業承継・M&A補助金が6日締切、小規模事業者持続化補助金が5日受付開始

先月(10月)に変わったこと

1. インボイスの経過措置が「80%控除」から「70%控除」へ

免税事業者など、インボイスを出せない相手からの課税仕入れについて、仕入税額相当額の一定割合を控除できる経過措置があります。この割合が10月1日に下がりました。

国税庁の資料では、80%控除が令和5年10月1日〜令和8年9月30日、70%控除が令和8年10月1日〜令和10年9月30日。その後は50%(令和10年10月〜令和12年9月)、30%(令和12年10月〜令和13年9月)と段階的に下がります。

控除割合適用期間
80%2023年10月1日〜2026年9月30日
70%2026年10月1日〜2028年9月30日
50%2028年10月1日〜2030年9月30日
30%2030年10月1日〜2031年9月30日

ポイント:9月30日までの取引と10月1日以降の取引で、割合が変わります。月末締めの請求書が期をまたぐ場合は、経理担当と区分を確認してください。

出典:国税庁「免税事業者等からの課税仕入れに係る経過措置を適用する場合の税額計算」(Q&A 問130)

2. パート・有期雇用への労働条件明示に1項目追加

パートタイム・有期雇用で働く人を雇い入れるとき、これまでは「昇給の有無」「退職手当の有無」「賞与の有無」「相談窓口」の4つを明示する必要がありました。2026年10月から、ここに1項目が加わっています。

追加されたのは「通常の労働者との待遇の相違の内容・理由等について説明を求めることができる」旨。雇い入れ時だけでなく、契約を更新するときも対象です。

同じタイミングで、同一労働同一賃金ガイドラインも見直されました。裁判例を踏まえ、家族手当・住宅手当・夏季冬季休暇の考え方が明記されています。

  • 家族手当:相応に継続的な勤務が見込まれる場合は、正社員と同一の支給が必要
  • 住宅手当:正社員と同じ転居を伴う配置変更がある場合は、正社員と同一の支給が必要
  • 夏季冬季休暇:正社員と同一の付与が必要

労働条件通知書のひな形を使い回している会社は、ここで1回だけ差し替えが必要になります。自社の手当が該当するかどうかの判断は、社会保険労務士にご相談ください。

出典:厚生労働省Webマガジン「パート・有期雇用労働者への説明、できていますか?」

3. カスハラ・求職者等セクハラの防止措置が義務化

先月号でお伝えしたとおり、2026年10月1日から改正労働施策総合推進法などが施行され、カスタマーハラスメントと求職者等へのセクシュアルハラスメントの防止措置が全事業主の義務になりました。

中小企業の猶予期間はありません

福井労働局のページには「令和8年10月1日から全ての事業主に、カスハラ・求職者等セクハラの防止措置が義務付けられます」と明記されています。パワハラ義務化のときのような中小企業の猶予期間は、今回ありません。

出典:厚生労働省 福井労働局「法令・制度」

あわせて、厚生労働省の「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」が令和8年度改訂版になりました。企業方針の文案、小規模企業向けの対応フロー図、研修コンテンツ例、対策のチェックリストが入っていて、ポータル「あかるい職場応援団」から無料で手に入ります。

ゼロから文面を考える必要はありません。ひな形を自社の言葉に直すところから始めてください。

出典:厚生労働省「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル(令和8年度改訂版)」

4. 事業承継・M&A補助金 十六次公募がスタート

中小企業庁の「事業承継・M&A補助金」十六次公募の申請受付が、10月2日に始まりました。枠は事業承継促進枠・専門家活用枠・PMI推進枠・廃業・再チャレンジ枠の4つ。

親族内や従業員への承継にともなう設備投資を支援する事業承継促進枠は、補助上限800万〜1,000万円(一定の賃上げで1,000万円に引き上げ)、補助率は1/2、小規模事業者は2/3です。

申請は電子申請(Jグランツ)のみ。GビズIDプライムアカウントの取得に2〜3週間かかるため、まだ持っていない会社は今回の締切には間に合わない可能性があります。

出典:中小企業庁「事業承継・M&A補助金(十六次公募)」

5. テレワーク制度の整備に、最大35万円の助成

人材確保等支援助成金(テレワークコース)の令和8年度版の手引きが公開されています。雇用保険の適用を受ける中小企業事業主が対象です。

テレワーク勤務制度を整備して評価期間の要件を満たすと「制度導入助成」20万円。その後、離職率の低下とテレワーク実績の目標を達成すると「目標達成助成」10万円が加算され、賃金要件を満たす場合は15万円になります。合計で最大35万円。

申請はいずれも評価期間末日の翌日から2か月以内です。過去3年以内に同じ助成金を受給した事業主は対象外なので、先に受給歴を確認してください。

出典:厚生労働省「人材確保等支援助成金(テレワークコース)申請の手引き(2026(令和8)年度版)」

今月(11月)の期限・予定

日付内容
11月5日(木)小規模事業者持続化補助金〈一般型・通常枠〉第20回 申請受付開始
11月6日(金)17:00事業承継・M&A補助金 十六次公募 申請締切(予定)
12月4日(金)持続化補助金 事業支援計画書(様式4)の発行受付締切
12月15日(火)17:00持続化補助金 第20回 申請締切

持続化補助金の第20回は、補助上限50万円が基本です。免税事業者からインボイス発行事業者になった場合の特例で+50万円、賃金引上げ特例で+150万円の上乗せがあり、両方該当すると最大250万円。補助率は2/3、賃金引上げ特例に取り組む赤字事業者は3/4です。

実質的な前倒し期限は、商工会・商工会議所が出す事業支援計画書の発行受付締切(12月4日)になります。12月に入ってから動くと間に合いません。

公募期間や条件は変わります

なお、補助金・助成金の公募期間や条件は変わります。申請前に必ず公式サイトで確認してください。

出典:中小機構 J-Net21「小規模事業者持続化補助金〈一般型・通常枠〉第20回」/小規模事業者持続化補助金〈一般型・通常枠〉公式サイト

制度の変化を、一人で追わないために

毎月これだけ動くと、社長が一人で全部を追うのは無理があります。情報の入り口を、社外に持っておくほうが現実的です。

Rootsに登場した株式会社エグゼマッチ 代表取締役の猪谷進介さんは、同業の経営者との関係についてこう話していました。

同業者こそ仲良くしてほしい

猪谷進介さん(株式会社エグゼマッチ)

同じ業種なら、効いてくる制度も似ています。競合ではなく情報源として付き合えると、制度の変化に気づくのが早くなる。

来春に向けて:飲食料品の消費税率引下げ

国税庁が、飲食料品にかかる消費税率引下げの情報ページを公開しています。実施は令和9年(2027年)4月1日から令和11年(2029年)3月31日までの2年間、税率は国・地方の合計で1%という内容です。

対象は飲食料品の販売と、保税地域から引き取られる飲食料品。範囲は、令和9年3月31日以前に税率8%の対象だった飲食料品と同じとされています。

ただし、これは「飲食料品消費税率の臨時的な引下げ及び就業者負担軽減支援金の導入に関する大綱」(令和8年9月15日閣議決定)に基づく改正案の説明です。法案が国会で可決・成立した場合に適用されるもので、確定ではありません。

それでも、食品を扱う会社は早めに見ておく価値があります。資料には、次のような準備の話が入っているからです。

  • 免税事業者:令和9年4月1日の属する課税期間中に「課税事業者選択届出書」を出すと、その期間から課税事業者になれる
  • 簡易課税事業者:同じ期間中に「簡易課税制度選択不適用届出書」を出せば一般課税で申告でき、この期間については2年間の継続適用要件(2年縛り)が適用されない
  • 総額表示:令和9年2月1日から5月31日までは、税率8%または1%での総額表示が認められる

レジや受発注システムの改修、価格表示の差し替えには時間がかかります。年明けに慌てないよう、いま確認だけ済ませておくのが安全です。

個別の有利・不利の判断は、税理士にご相談ください。

出典:国税庁「軽減税率制度・消費税率引下げについて」/国税庁「飲食料品に係る消費税率の引下げについて」(リーフレット)

Rootsの新着

10月に公開したコラムは3本です。

インタビューは、9月公開の2社をあらためてご紹介します。どちらも全3回の構成です。

まとめ

10月の変更は、どれも「書類をひとつ直せば済む」ものでした。インボイスの区分、労働条件通知書のひな形、カスハラ対応の方針文。

11月にやることは、はっきりしています。補助金を考えている会社は、まず締切の日付をカレンダーに入れてください。事業承継・M&A補助金は6日、持続化補助金は商工会への依頼を含めて12月4日が実質の山場です。

今週やる一歩は、使っている労働条件通知書のひな形を1枚だけ開いて、追加された項目が入っているか確かめること。5分で終わります。

制度は毎月動きますが、全部を自分で追う必要はありません。来月もこの月報で、一次情報だけを拾ってお届けします。

R

この記事を書いた人

Roots編集部(株式会社With)

中小企業の経営者インタビューを続ける編集部。取材で聞いた経営者の実践を、ほかの会社でも使える形にまとめています。

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