信用金庫からWeb業界へ転身し、過酷な労働環境を経て独立した株式会社エグゼマッチの猪谷進介さん。
人脈も相談相手もいない状態から、経営者とのつながりで事業を立て直すまでの歩みを聞きました。
病弱だった幼少期と、お金への関心
私は母子家庭で育ちました。幼い頃は病弱で、小学校にも十分に通えませんでした。
裕福とはいえない家庭環境だったこともあり、早くから『お金』や『金融』に強い関心を持つようになりました。
その関心から、就職先に選んだのは信用金庫です。
多くの中小企業と接し、決算書を読み、経営者の悩みを聞きました。特に大きいと感じたのが、販路開拓とキャッシュフロー・財務の課題です。
ただ信用金庫という立場では、本当に必要とされるところまで支援できません。もどかしさを感じていました。
相談を受けても、必要な支援を最後まで届けられない。その思いが積み重なり、30歳の節目に金融業界を離れることを決めました。
30歳で未経験のWeb業界へ
次に選んだのは、SEO対策を強みとするWebマーケティングのベンチャー企業です。2019年頃、これからはWebの知識が欠かせないと感じたことが転身の理由でした。
ほかの仕事をしながら夜に勉強するのは、現実的には難しいと思いました。それならWebマーケティングの会社に入り、実務の中で一から学ぼうと考えたんです。
新しいことを始めるのに、30歳でも40歳でも年齢は関係ない。そう思っています。
未経験でも、やると決めたら飛び込む。その気持ちで入社しました。営業だけでなく商品づくり、契約書の作成、請求書の送付まで、一連の業務を一人で担いました。
ただ働き方はかなり過酷でした。朝から働き始め、終わるのは翌朝5時頃。
そんな日々が約1年間続き、体調を崩す寸前まで追い込まれました。このままでは体が壊れると思って会社を辞め、勢いで独立しました。
最初から独立志望だったのではなく、流れの中で自分でやっていくしかない状況になったんです。
人脈も相談相手もいない独立
独立後は個人事業主としてSEO対策の仕事から始めました。ただ準備を重ねたうえでの起業ではありません。
仕事につながる人脈も、経営について相談できる相手もいない状態でした。
こうしたらどうだろう、違ったら変えよう。行動しては直すことを繰り返しました。PDCAというより、まず動くところから始める“BDCA”のような感覚でした。
信用金庫時代に経営者の方から何度も聞いていた『販路開拓が難しい』という言葉の意味を、独立して初めて自分自身の問題として理解しました。
営業しても成果につながらず、知名度も実績も相談先もない。赤字が続き、毎月約30万円のキャッシュが出ていく状況でした。
資金が減り続ける中では、判断の一つひとつに不安がつきまといました。それでも試して、振り返り、また動くことは止めませんでした。
自分の考え方や行動を何度も見直す必要がありました。
経営者との出会いが、仕事の流れを変えた
状況を変えてくれたのは、経営者の方々とのつながりでした。交流会などへ足を運び、人と会う機会を少しずつ増やしました。すると相談できる経営者の方も増えていきました。
つながりが増える中で、『周りにWebマーケティングを検討している社長がいるよ』と紹介していただけるようになりました。
それで少しずつ事業が軌道に乗っていったんです。
最初はSEO対策が中心でした。お客様から『広告も出したい』『サイトをリニューアルしたい』と相談を受けるようになり、サイト制作、SNS運用代行、広告運用へと支援領域を広げました。
その後、約6年間にわたってWebマーケティング事業を続けました。
独立当初から心に残っていたのは、経営者同士の横のつながりの重要性です。自分が苦しいとき、周囲の経営者の方々からアドバイスや紹介をいただいて前に進めました。
その経験から『経営者が助け合える場所をつくりたい』と考えるようになりました。
第一号会員は、交流会からの帰り道で
コミュニティを立ち上げた後、最初の壁は会員集めでした。コミュニティは人がいて初めて価値が生まれます。第一号会員の方が入る時点では、ほかに誰もいません。
誰でも入れる場にはしません。必ず私が話をして、『この方なら』と感じた方だけに案内する方針を貫きました。
人数だけを追わず、信頼できる関係を優先しました。立ち上げは簡単ではありません。
そこで都内の交流会に週3回ほど参加しました。さまざまな場所に繰り返し顔を出すと、同じ方に何度も会います。
『また会いましたね』というところから、少しずつ仲良くなっていくんです。深い話をしていなくても、接触回数が増えることで関係ができていきました。
ある交流会の帰り道、立ち上げようとしているコミュニティについて話しました。すると相手の方から『第一号で入りたい』と声をかけていただきました。
まだ内容や料金を詳しく伝える前に『まずは入りますよ』と言っていただきました。本当にうれしかったですね。
二人目、三人目が加わるまでには時間がかかりました。
ただ人数が増えるにつれて会員の方からの紹介が生まれ、コミュニティ内の投稿や交流も徐々に活発になっていきました。
約5カ月で約140名へ。それでも「誰でも入れる場」にはしない
現在運営しているコミュニティは、大きく2種類あります。一つは法人代表者に限定した場。
もう一つは法人代表者に加えて、執行役員以上と個人事業主も参加できる場です。
リリースから約5カ月で、それぞれ約80名。重複を除くと約140名の方に参加していただく規模になりました。
規模が広がっても、必ず私が参加希望者と話してから案内する方針は変えていません。
サイトにはサービス内容や大まかな料金を掲載していますが、申込フォームは公開していません。
人数だけを増やすのではなく、コミュニティの考え方に合う方に参加していただきたい。
会員の方には、プロフィールに会社名、事業内容、強み、課題などを掲載していただきます。協業の可能性を感じる相手と直接つながれるようにしました。
掲示板やオンライン交流会に加え、5〜7人ほどで経営課題を考える壁打ちセッション、税務・財務・営業などを学ぶ勉強会も用意しました。
私が目指しているのは、名刺交換の延長にある場ではありません。互いの課題に向き合う中で信頼を育て、紹介や協業が自然に生まれる場所です。
人脈ゼロの時期に周囲の方々から救っていただいた経験。それがいまのコミュニティの仕組みにつながっています。
支えになった『人を動かす』と、今伝えたいこと
苦しい時期に支えになった一冊は、デール・カーネギーの『人を動かす』です。押しつけや一方的な営業ではなく、相手への関心と信頼の積み重ねが人を動かす。
その考え方は現在のコミュニティ運営にも通じています。
どん底を味わったとき、助けてくれたのは周りの方々のアドバイスやサポートでした。出会いはいつ起こるかわかりません。
つながった人を大切にしてほしい。直感で素敵な方だと思ったら、そのご縁を丁重に扱ってほしいと思います。
AIが普及し、効率化できる領域が増える時代。だからこそ人と人との信頼はより重みを増します。
人脈ゼロで独立し、出会った方々に救っていただいた経験が原点です。これからも信頼あるつながりを育てていきます。
編集後記
人脈ゼロからの独立、と書くと勢いのある話に見えます。ただ猪谷さんが話したのは、赤字が続いた時期の地味な積み重ねでした。
信用金庫で何度も聞いていた「販路開拓が難しい」が、独立して初めて自分の問題になる。聞いていたことと、わかっていたことは違っていました。
毎月30万円が出ていく。その状況を変えたのは広告ではなく、交流会に足を運んで増やした接点でした。
週3回、同じ場に顔を出す。深い話をしなくても、会う回数が関係をつくる。
第一号会員は、内容も料金も詳しく伝える前に決まりました。先に効いていたのは、何度も顔を合わせた時間です。
約5カ月で約140名。それでも申込フォームは公開せず、必ず本人と話してから案内しています。
再現性があるのは、たいていこうした話です。人脈がないと感じているなら、増やすのは名刺ではなく会う回数でしょう。
会社概要
| 会社名 | 株式会社エグゼマッチ |
|---|---|
| 代表者名 | 猪谷進介さん |
| 設立 | — |
| 所在地 | — |
| 事業内容 | 経営者コミュニティの運営、Webマーケティング支援(SEO・サイト制作・SNS運用代行・広告運用) |
| Webサイト | — |
会社情報
- 会社名
- 株式会社エグゼマッチ
- 代表者名
- 猪谷 進介
- 設立
- 2025年7月
- 所在地
- 〒150-0044 東京都渋谷区円山町5番3号 MIEUX渋谷ビル8階
- Webサイト
- https://exem.co.jp/
- 会社概要
- 経営者コミュニティ運営事業、Webマーケティング事業
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