経営者の交流会に誘われて、「行く意味はあるのか」と迷う社長は少なくありません。時間もお金も限られる中、合わない場に通い続けるのは避けたいところです。
結論から言うと、選ぶ基準は「人数」より「本音で話せる関係が育つ仕組み」があるかどうか。そして紹介は、名刺の枚数ではなく会う回数と信頼から生まれます。
この記事では、コミュニティの選び方と、紹介が生まれる関わり方を整理しました。人脈ゼロから独立し、いまは経営者コミュニティを運営する株式会社エグゼマッチ・猪谷進介さんの実例も紹介します。
この記事でわかること
- 経営者コミュニティ選びで迷う理由と、見るべき5つのポイント
- 紹介が生まれる人と、生まれない人の関わり方の違い
- 人脈ゼロから紹介で事業を軌道に乗せた社長の実例
経営者コミュニティ選びで迷うのは、目的が決まっていないから
多くの社長がコミュニティ選びでつまずくのは、場の良し悪しより先に「自分が何を求めているか」が決まっていないためです。まずは、よくある迷い方を見てみましょう。
- 名刺はたくさん集まったのに、仕事の話につながらない
- 売り込みばかりの会で疲れてしまい、足が遠のいた
- 会費を払っているが、何に使えばいいのか分からない
- 同業者ばかりで、話すと競合になりそうで気まずい
- 相談したいことはあるのに、初対面では本音を言いにくい
こうした迷いの多くは、「とりあえず人脈を広げたい」という入口から来ています。人脈という言葉は広いため、場に求めるものがぼやけやすいのです。
経営者が場に求めるものは、大きく4つ
経営者がコミュニティに求めるものは、おおむね「学び」「相談」「紹介・協業」「仲間」の4つに分けられます。どれを一番に置くかで、合う場は変わってくるはず。
たとえば税や労務を学びたいなら、勉強会が充実した場が合います。一方で売上につながる紹介を求めるなら、会員同士が互いの事業を深く知れる場のほうが向いています。
経営者コミュニティの種類と、それぞれの向き不向き
一口に経営者の集まりといっても、成り立ちや目的はさまざまです。代表的な種類を比べると、選ぶときの手がかりになります。
| 種類 | 主な特徴 | 向いている目的 |
|---|---|---|
| 商工会議所・商工会 | 地域の経済団体。セミナーや経営相談、会員同士の交流がある | 地域とのつながり、公的な情報や相談 |
| 中小企業家同友会などの経営者団体 | 経営者同士で学び合う例会や勉強会が中心 | 学び、経営の考え方を深める |
| 民間の経営者コミュニティ | 運営会社ごとに形式が違う。オンライン型も多い | 紹介・協業、相談相手づくり |
| 異業種交流会(単発) | 誰でも参加しやすく、出会いの数が多い | 出会いのきっかけづくり |
商工会議所は主に市の地域、商工会は主に町村の地域で活動する団体です。どちらも、地域の事業者を支える公的な性格を持つ組織。
無料で相談できる「よろず支援拠点」もあります
国が各都道府県に設けた無料の経営相談所です。コミュニティとは性格が違うものの、専門家に何度でも相談できる窓口として覚えておくと安心でしょう。
単発の交流会は「入口」として使う
単発の異業種交流会は、出会いの数を増やすには役立ちます。ただ、1回会っただけで仕事を頼み合う関係になることはまれです。
交流会は「気になる人を見つける場」と割り切り、その後の関係づくりは別の場で行う。この使い分けを意識すると、疲れにくくなります。
失敗しない経営者コミュニティの選び方5つのポイント
ここからは、実際に入る場を選ぶときの確認ポイントです。見学や説明会の段階で、次の5つを聞いてみてください。
- 参加の条件があるか:誰でも申し込める場か、運営者が面談してから案内する場か
- 少人数で話す仕組みがあるか:大人数の懇親会だけでなく、数人で課題を話す時間があるか
- 会員の事業が見える工夫があるか:プロフィールや自己紹介で、強みや困りごとが分かるか
- 売り込みへのルールがあるか:初対面での営業を控えるなど、場の約束事があるか
- 続けて会える頻度か:月1回の例会だけか、オンラインも含めて接点を重ねられるか
ポイント:人数の多さより「本音で話せる関係が育つ仕組み」があるかを見る。
特に大事なのは、2と5です。人は会う回数が増えるほど、少しずつ相手を信頼するようになるもの。
少人数で課題を話す場があれば、相手の人柄や仕事への姿勢が見えます。その積み重ねが、「この人なら紹介できる」という判断につながるのです。
入会前に確かめたい3つの質問
見学のときは、運営者や既存の会員に次のように聞いてみると、場の空気がつかめます。
- 「この場で生まれた紹介や協業には、どんな例がありますか」
- 「入ったばかりの人は、最初の3か月をどう過ごしていますか」
- 「合わずにやめた人は、どんな理由が多いですか」
答えが具体的であれば、会員同士の関係がきちんと育っている場だと考えられます。反対に、人数や有名な会員の話ばかりなら、少し慎重に見たほうがよいかもしれません。
実例:人脈ゼロの独立から、紹介で事業を軌道に乗せた社長
ここで、Rootsで取材した株式会社エグゼマッチの猪谷進介さんの歩みを紹介します。猪谷さんは、信用金庫とWebマーケティング会社を経て独立しました。
独立した当初は、人脈も相談相手もいない状態でした。営業しても成果が出ず、毎月約30万円のキャッシュが出ていく時期もあったといいます。
状況を変えてくれたのは、経営者の方々とのつながりでした。交流会などへ足を運び、人と会う機会を少しずつ増やしていくと、相談できる経営者の方も増えていきました。
猪谷進介さん(株式会社エグゼマッチ)
やがて「周りにWebマーケティングを検討している社長がいるよ」と紹介され、事業が軌道に乗っていきました。この経験が、経営者が助け合える場をつくる原点です。
週3回の交流会で分かった「接触回数」の力
猪谷さんは、自社のコミュニティを立ち上げるときにも交流会を活用しました。都内の交流会に週3回ほど参加し、同じ人と何度も顔を合わせたそうです。
『また会いましたね』というところから、少しずつ仲良くなっていくんです。深い話をしていなくても、接触回数が増えることで関係ができていきました。
猪谷進介さん(株式会社エグゼマッチ)
ある交流会の帰り道、構想中のコミュニティの話をすると、相手から「第一号で入りたい」と声がかかりました。内容や料金を詳しく伝える前の出来事だったといいます。
「誰でも入れる場」にしない理由
猪谷さんのコミュニティは、リリースから約5カ月で重複を除き約140名が参加する規模に。それでも、必ず代表が参加希望者と話してから案内する方針は変えていません。
会員はプロフィールに事業内容や強み、課題を載せ、協業できそうな相手と直接つながれます。5〜7人ほどで一人の経営課題を考える壁打ちセッションも、関係づくりの柱の一つです。
私が目指しているのは、名刺交換の延長にある場ではありません。互いの課題に向き合う中で信頼を育て、紹介や協業が自然に生まれる場所です。
猪谷進介さん(株式会社エグゼマッチ)
紹介と信用が循環する「同盟」という考え方
猪谷さんが目指すのは、強く売り込むのではなく、紹介で売上が立つ仕組みです。その感覚を、次のように表現していました。
営業担当を増やして強く売り込むのではなく、リファラルで売上が立つ仕組みをつくる。それは、経営者同士で“同盟”をつくっていく感覚に近いと思っています。
猪谷進介さん(株式会社エグゼマッチ)
壁打ちで互いの悩みを真剣に考えると、人柄や仕事への姿勢が見えてきます。選び方のポイントで挙げた「少人数で話す仕組み」が、実際に紹介の土台になっている例といえるでしょう。
紹介が生まれる人がしている、コミュニティでの関わり方
良い場に入っても、関わり方しだいで得られるものは変わります。紹介を受けやすい人に共通するのは、「もらう前に、相手を知ろうとする」姿勢です。
1. 最初の3か月は、売らずに知ってもらう
入会してすぐに自社サービスを案内すると、相手は身構えてしまいます。最初の3か月は、自分の事業と人柄を知ってもらう期間と考えましょう。
自己紹介では「どんなお客様の、どんな困りごとを解決してきたか」まで話すと伝わりやすくなります。紹介する側が、誰につなげばよいかを思い浮かべやすいからです。
2. 長く話すより、何度も顔を出す
紹介は、相手の頭に自分の顔が浮かぶかどうかで決まります。1回の長い懇親会より、短くても何度も会うほうが印象に残ります。
オンラインの交流会や掲示板があるなら、月に数回は顔を出してみてください。「また会いましたね」から始まる関係は、思っている以上に強いものです。
3. 相談に乗る側に回る
壁打ちや相談の場では、自分の悩みを話すだけでなく、ほかの人の課題も一緒に考えましょう。真剣に考える姿は、何よりの自己紹介になるはずです。
猪谷さんは、会員に「同業者こそ仲良くしてほしい」と伝えているそうです(インタビュー②より)。同じ業界でも得意分野は違うため、対応できない相談を回し合えるという考え方。
4. 紹介を受けたら、結果を返す
紹介してもらったら、商談の結果やお礼を紹介者にきちんと伝えます。うまくいかなかった場合も、ひと言の報告があるだけで信頼は深まります。
ポイント:紹介は「会う回数」と「相手のために動いた実績」の積み重ねから生まれる。
よくある質問
Q. 経営者交流会に参加するメリットは何ですか?
同じ立場の経営者と、社内では話しにくい悩みを共有できることが大きなメリットです。そのうえで、学びや紹介、協業のきっかけも得られるでしょう。
ただし、単発の交流会だけでは関係が深まりにくい面もあります。気になる人とは、その後も会える場で関係を続けるのがおすすめです。
Q. 会費が高いコミュニティほど、質は高いのでしょうか?
会費の高さだけで質は判断できません。大切なのは、会費に見合う「話せる時間」と「会員の事業が見える仕組み」があるかどうかです。
入会前に、紹介や協業の具体例を運営者に聞いてみましょう。答えが具体的なら、会員同士の関係が育っている場と考えられます。
Q. いくつのコミュニティに入るのがよいですか?
最初は1つに絞り、半年ほどしっかり関わるのがおすすめ。複数に入ると、どこでも顔を出す回数が減り、関係が深まりにくくなるためです。
1つの場で信頼できる人ができたら、その人から別の場を紹介してもらう方法もあります。
まとめ
経営者コミュニティは、入るだけで紹介が増える場所ではありません。選ぶ基準は人数より、少人数で本音を話せる仕組みがあるかどうか。
まずは気になる場の見学に一度足を運び、入ったばかりの人の最初の3か月の過ごし方を聞いてみてください。
紹介は、会う回数と相手のために動いた積み重ねから生まれるもの。「また会いましたね」と言える相手を一人つくるところから、始めてみましょう。
出典・参考
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