「うちには発表するような新商品がない」。プレスリリースの相談で、一番多いのがこの声です。
けれど、報道の入口になるのは新商品だけではありません。会社に起きた「変化」なら、どの会社にもあります。
この記事では、初めてプレスリリースを出す中小企業向けに、ネタの見つけ方と出し方の手順をまとめました。
Rootsに登場した経営者の言葉も、ネタ探しのヒントとしてあわせて紹介します。
この記事でわかること
- 新商品がなくてもプレスリリースになる、5つの「自社の変化」
- 社内の5か所から探すネタの見つけ方と、出すまでの5ステップ
- 「業界初」「No.1」と書く前に確かめたい景品表示法の注意点
結論:プレスリリースのネタは「自社の変化」から探す
結論から先にお伝えします。プレスリリースとは、報道してもらうために会社の変化を知らせる文書のこと。
新商品の発表だけが対象ではありません。次のどれかに当てはまれば、出せるネタになります。
- 新しい取り組みを始めた(サービス、拠点、設備、社内制度)
- 人や体制が変わった(代表の交代、新しい部署、採用の仕組み)
- 数字の節目に届いた(創業〇年、累計〇件、〇社への導入)
- 外部と組んだ(他社、学校、自治体との連携)
- 社会の動きに自社が関わった(法改正への対応、地域の課題解決)
ポイント:探すのは「すごいこと」ではなく「変わったこと」。記者が知りたいのは、新しさと、その地域や業界にとっての意味です。
「出すネタがない」と感じてしまう3つの理由
ネタがないわけではなく、見つけ方が分からない。多くの会社が、同じところでつまずいています。
1つ目は、ニュースの基準を高く置きすぎていること。全国ニュースを思い浮かべると、自社の話はどうしても小さく見えます。
地域紙や業界メディアが実際に扱うのは、もっと身近な話題。従業員30名の会社の新しい制度でも、十分に記事になります。
2つ目は、自社の当たり前が価値だと気づいていないこと。毎日やっていることほど、珍しさに鈍感になるものです。
参考になるのが、Rootsを運営する株式会社With 代表取締役の秋枝紗由里さんの言葉。独立した当初の付加価値を、こう振り返っています。
雇用ではなく、業務委託でリモート対応できることを自分の付加価値として売っていました。それが今の仕事の原点だと思います
秋枝紗由里さん(株式会社With)
当時はリモートで対応すること自体が珍しかった。自社にとっての普通が、外から見れば新しさになる一例です。
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3つ目は、誰に届けたいかが決まっていないこと。相手が決まらないと、どの変化を選ぶかも決められません。
ネタの見つけ方と、出し方の5ステップ
探す場所と出す順番が決まれば、プレスリリースは作業になります。ここからは手を動かす部分。
ネタの見つけ方:社内の5か所を見にいく
見る場所が決まっていれば、ネタ探しは30分ほどで終わります。次の5か所を順番に見てください。
| 見るところ | 探すもの | 出せる形 |
|---|---|---|
| 受注・納品の記録 | 初めての業種、過去最大の案件、累計の節目 | 「〇〇業界へ初導入」「累計〇件を突破」 |
| 社内で決まったこと | 新しい制度、設備投資、拠点の変更 | 「〇〇制度を導入」「〇〇に新拠点」 |
| 採用・人事 | 入社者の経歴、資格の取得、役員の就任 | 「〇〇の専門家が参画」 |
| お客さまの声 | よく聞かれる質問、感謝された場面 | 「〇〇に関する調査結果を公表」 |
| 外部との関わり | 自治体や学校との連携、イベントへの登壇 | 「〇〇市と連携」「〇〇で講演」 |
見つけたネタは、1行のメモで残しておけば使えます。「いつ・何が・どう変わったか」だけで十分。
発信そのものを続ける仕組みは、広報担当がいない会社の情報発信、最初の3か月でやることにまとめています。
出すまでの5つのステップ
ネタが1つ決まったら、出すまでの流れは決まっています。初めてでも、この順番なら迷いません。
- 届けたい相手を決める(地域の人/同業者/採用したい人)
- タイトルを1行で言い切る(30字前後、数字を入れる)
- 本文を型に沿って書く(下の表のとおり)
- 送り先を決めて送る
- 反応を記録して、次のネタにつなげる
本文の型
| 部分 | 書くこと | 目安の長さ |
|---|---|---|
| タイトル | 何が新しいかを1行で | 30字前後 |
| リード | いつ・どこで・誰が・何を始めたか | 100〜150字 |
| 本文 | なぜやるのか、何が変わるのか | 400〜800字 |
| 会社概要 | 社名、所在地、事業内容、設立年 | 100字程度 |
| 問い合わせ先 | 担当者名、電話番号、メールアドレス | 3〜4行 |
ポイント:一番時間をかけたいのは「なぜやるのか」。ここが弱いと、ただのお知らせで終わってしまいます。
「業界初」「No.1」と書く前に確認したいこと
根拠のない優位性の表示は、景品表示法で禁じられています
実際よりも著しく優良だと示す表示が「優良誤認表示」(同法5条1号)。取引条件が著しく有利だと誤認させる表示は「有利誤認表示」(同法5条2号)です。
どちらも、根拠となる資料が求められます。消費者庁は、No.1表示の根拠となる調査が適切かどうかについて、実態調査報告書も公表しています。
出典:消費者庁「表示規制の概要」/「No.1表示に関する実態調査報告書」(2024年9月26日公表)
ここでの説明は一般的な内容にとどめています。自社の表現が問題ないかどうかは、弁護士などの専門家に確認してください。
送り先の選び方:最初は2つでいい
送り先は大きく4種類。はじめから全部に送る必要はありません。
| 送り先 | 向いているネタ | 始めやすさ | 気をつけたいこと |
|---|---|---|---|
| 地域の新聞・テレビ・ラジオ | 地域に関わる話題、連携、雇用 | 編集部の宛先を調べれば送れる | 地域との関わりをはっきり書く |
| 業界の専門メディア | 技術、制度への対応、業界の節目 | 問い合わせ欄から送れる | 業界の言葉で具体的に書く |
| 自社サイトのお知らせ | すべてのネタ | すぐに出せる | 検索から読まれるので残しておく |
| プレスリリース配信サービス | 広く知らせたいネタ | 登録すれば送れる | 送れば記事になるとは限らない |
ポイント:迷ったら、地域の新聞と自社サイトの2つから。顔が見える相手に送るほうが、反応は返ってきます。
実例:エグゼマッチの猪谷進介さんが大切にしてきたこと
プレスリリースで一番伝わるのは、「なぜやるのか」の部分。ここに実感がこもっていると、記者の目に留まります。
株式会社エグゼマッチの猪谷進介さんは、人脈も相談相手もいない状態から独立しました。
苦しい時期に経営者とのつながりに助けられた経験から、コミュニティの構想が生まれたといいます。
その経験から、『経営者が助け合える場所をつくりたい』と考えるようになりました。
猪谷進介さん(株式会社エグゼマッチ)
事業の説明よりも先に、始めた理由がある。リリースの「なぜ」も、この順番で書くと伝わりやすくなります。
もうひとつ、猪谷進介さんの言葉を紹介します。
つながった人を大切にしてほしい。直感で素敵な方だと思ったら、そのご縁を丁重に扱ってほしいと思います。
猪谷進介さん(株式会社エグゼマッチ)
記者や編集者も、つながった人のひとり。一度送って終わりにせず、半年後の変化もあわせて知らせてみてください。
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よくある質問
Q. 配信サービスを使わないと、記事にはならないのでしょうか?
そうとは限りません。地域の新聞や業界メディアは、編集部の問い合わせ先を公開しています。
地域に関わるネタなら、直接送ったほうが届く場合もあります。
Q. どのくらいの頻度で出せばいいですか?
年に3〜4本出せていれば、小さな会社としては十分なペースでしょう。
数を無理に増やすより、1本の「なぜ」を厚く書くほうが残ります。
Q. 取材の依頼が来たら、何を準備すればいいですか?
会社概要、代表の経歴、使える写真の3点をそろえておけば慌てません。
触れてほしくないことがあれば、事前に伝えておくと安心です。掲載された記事の使い方は、社長インタビュー記事を採用・営業に使い回す7つの方法で紹介しています。
Q. 記事にならなかったときは、無駄になりますか?
自社サイトに残しておけば、検索から読まれます。
採用の候補者や取引先が会社を調べるとき、変化が積み上がって見える資料になるはず。
まとめ
プレスリリースは、新商品がなくても出せます。探すのは「すごいこと」ではなく、会社に起きた変化です。
まずはこの1年で変わったことを、3つだけ書き出してみてください。そのうち1つを選び、タイトルを1行にするところから始められます。
小さな会社の変化は、地域や業界にとっては十分に新しい話。自社の当たり前を、外の言葉に置き換える練習から始めてみましょう。
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